19


 くちゅくちゅと、コウライギに触れられているところから音がする。指で押し拡げられる動きが堪らなく気持ち良くてとろとろと蕩けそうになりながらも、徹は必死に声を殺していた。
「んっ、ん、……んんっ」
 寝室は未だに煌々と明るく、コウライギにくちづけられ手慣れた仕草で寝衣を脱がされながら高められて、徹はすっかり明かりについて言及するタイミングを逃してしまっていた。部屋が明るいと、首輪以外すっかり全裸になってしまった自分自身の姿も、同じく寝衣をほとんど脱ぎ捨てているコウライギの姿もよく見えて、それが羞恥心を忘れさせてくれない。
 コウライギの指がそこをぐちゅぐちゅと抉る度につい視線が向くのだが、そうするとどうしても自分自身の勃起したものも目に入ってしまう。ぴんと勃ちあがったそれは、コウライギが中のびりびりと痺れるような感覚を齎すところを押すのに合わせて、腺液をたらたらと零している。それが耐えられないほど恥ずかしいのに、どうすることもできない。せめて声だけは堪えたくて、徹は指を噛んで熱い息を吐き出した。
『トール……』
 コウライギがゆっくりと覆い被さる形で身体を倒し、徹にくちづけてくる。ちゅっちゅっと軽く唇を合わせながら、体内に呑み込ませた指を擦り合わせるように動かされて、ひう、と変な声が漏れた。その声ごと呑み込むように唇を重ねられ、刺激にわななく唇を甘噛みされる。
「んふ、ん、んぅ」
 ざらざらと舌を擦りつけられ、粘膜を舐められてぞわぞわと痺れに似た感覚が背筋から腰に落ちていく。引き出された舌をちゅぷちゅぷ音を立てながらしゃぶられて顔が熱い。徹はほとんど無意識に腰を揺らし、蠢くコウライギの舌を追って彼の咥内に舌を押し込んだ。首に腕を回し、顔を傾けて無心で舌を絡め合う。
 どちらのものかわからなくなった唾液を飲み込み、時折熱い息を逃しながらまた唇を舐める。ぬるぬると触れ合うのが気持ち良くて、ぎゅっと閉じていた目をうっすら開けば、潤み滲んだ視界に同じく欲情に潤んだ瞳が見えた。
 キスを繰り返す間にもコウライギの手は徹の全身をまさぐっていて、彼の指に拡げられている部分もそれ以外のところも、全てが敏感になっていくようだ。今も彼の掌が脇腹から腰にかけて緩やかに上下していて、その動きが送り込んでくる仄かな快感が積み重なって下腹が熱くなる。
「んあ、は、コウライギ……」
『いいか? トール……』
 優しく伺いを立ててくるコウライギに頷き、徹は羞恥心を堪えて脚を開いた。一旦身を引いたコウライギがその様をじっと見下ろしてくる。
 勃起してとろとろと体液を垂らすものも、散々掻き混ぜられて溶け出した油脂に濡れたところも、全て彼の目の前に晒してしまっている。明るいところでこんな真似をしている自分が恥ずかしくて仕方ない。羞恥に我慢できなくなってそのまま左横を向こうとすると、コウライギに右足を持ち上げられた。
「ぁ……」
 下になった左足を跨がれ、右足は太股を掴んで高く上げられる。そして、先ほどまで彼の指に虐められていたところに、熱いものがぬるりと押し当てられた。
「はんっ、んっ、んふ、ふあぁ……」
 すっかり蕩けたそこに、硬くなった彼のペニスがゆっくりと侵入してくる。指を抜かれて収縮していたところを押し拡げられる感覚に、徹は浮かされたような喘ぎを零した。浅いところでぬぷぬぷと抜き差しされて、そこがひくひくと蠢くのが自分でもわかる。
『……お前のここは、飲み込みがいいな』
「ふ、ぁ、あ……!」
 欲情しきった表情で見下ろされて、それだけでコウライギのものを咥えたそこがひどくうねる。中で形を確かめるその堪らない感覚に喉を反らせたのと同時に、ぐっと深く押し込まれて声を失った。深いところまで拡げられる充溢感が鳥肌が立つほど良くて、唇を震わせて吐息だけで喘ぐ。今までとは違う体勢のためか、圧迫感は以前ほどではない。滑らかに抽挿を始められ、徹は声にならない喘ぎで何度もコウライギの名を呼んだ。
「んあっ、あっ、こ、う、ふあっ、あっああっ」
『ん、あまり深くしない、から、安心しろ』
「はあ、あ、んっ、く……」
 コウライギが言った通り、それは前回ほど深いところまでは入ってきていない。視線を繋がっているところに向けると、彼の巨きなものが半ばまで入っては抜けていくのが見えた。それは徹の中を思う様擦り上げ、抉り、掻き混ぜて、受け止めきれないほどの快感を与えてくる。
 これで、半分なんだ。ぐりぐりと中を抉られ、襞を掻き分けられるごとに強い快感が駆け抜けて中がうねる。ひくひくと痙攣しながら締めつけるそこからは、じゅぷじゅぷと聞くに耐えないような音が上がって明るい部屋に響いている。徹は知らず知らず繋がったところを凝視して自らの唇を舐めた。
「んうっ、ん、んあっ、は、はぁっ」
 つ、と視線をコウライギの顔に向ける。滲んだ汗で濡れた美しい金髪が、彼の額や鎖骨にはりついている。目を細めて腰を揺する姿が淫靡で、徹は喘ぐ合間にごくりと喉を鳴らした。
 コウライギに抱かれるまで、誰とも性的に触れ合ったことがなかった。セックスにおいて、どこまでが自然でどこからが淫ら過ぎるのかわからない。そんな躊躇いは徹を強く見つめながらセックスに没頭するコウライギの姿に掻き消されて、徹はゆるゆると微笑みを浮かべて唇を開いた。
「ぁ、ああっ、ふ、コウライギ、ね、コウライギ……」
『っ何だ、トール』
 ぐるりと中で円を描くように掻き回しながら問い返されて、徹はコウライギへと手を伸ばした。
「……っあ……もっと、深く……ください……いちばん、おくまで」
『、くそ……っ』
 途端に中に咥え込んだものがぐっと膨れた。そこが拡がる刺激に震えた徹の腰が掴み直され、コウライギの腰が強く押しつけられた。
「あひっ、ひっ! あ、ひら、開く、中が、あ、あ」
 ぐりぐりと押し込まれる。先ほどまでよりもどんどん奥へと入ってくるものに拡げられて唇が閉じられない。仰け反って全身を震わせる徹の中を押し拓き、コウライギのものがこつんと奥に当たった。
「はひ……」
 喘ぎ声ですら舌が回らない。身体のコントロールがきかなくなり、変な声が喉から溢れる。唇から舌を覗かせ、焦点を失いそうになる視界にコウライギを映すと、彼は徹の意思を察して唇を重ねてくれた。
 同時に、ごりっと音がしそうな勢いで最奥を拓かれた。
「……っ! ……!」
 奥の抵抗しているように思えたところを抜けた途端にずるりと入り込んでくる。気持ちがいいだとか悪いだとか、そんなものを超えた感覚に舌までも痙攣する。びくんと跳ねた身体を押さえ込まれ、ぐっと腰を押しつけられて、何も考えられなくなった。二人の間に挟まれた徹のものが、いつ射精していたのかさえわからない。
「ひぃ……っ、い、あ、いい、コウライギ、ぃ……」
 とろとろになった声で甘く喘ぐ。いつの間にか押し上げられていた絶頂がいつまでも続いて戻ってこられない。自ら腰を揺すると身体の奥から痺れるような甘い感覚が何度でも走って、徹はたらたらと勃起したものから精液を垂らして身体をくねらせた。
『トール、トール……っ』
 コウライギのものが動かされると、それがごりゅごりゅと全身に響く。弛んだ唇から垂れた唾液を舐められ、容赦なく腰を使われる。
「ひぅっ、ひっ、んう、あ、は、はひっ、あ……! あ、ぁ……!」
 一際強く押し込まれたそれから熱いものが奥に広がって、射精されたことを知る。徹は快感にほとんど呆然となりながらその感覚を追い、蕩けた微笑みを浮かべた。


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