54


 ゆっくりと寝台に下ろされ、徹は自分に覆い被さるコウライギを見上げた。
 もともと徹は周りの人々より身長が高い方で、見下ろされた経験もほとんどない。それなのに自分よりも頭二つ分ほど体格の優れたこの男のことは、初めて会った時から怖いとは思わなかった。
「コウライギ……」
 密やかに名前を呼ぶ。その声が自分のものとは思えないほど濡れた響きを帯びていて、徹は羞恥に目を伏せた。コウライギの気配が近づき、その瞼にくちづけられる。思わず顔を上げると、彼の唇はそれに呼応するように頬から首筋へと這い、ちゅっと音を立てて吸い付いてきた。
「んっ」
 寛げられた襟元から覗く鎖骨を甘く噛まれ、身体が竦む。ふ、と笑うような吐息が近くて、徹はうっすらと目を開けた。
『……良いか、トール』
 何のことか察して、小さく頷く。腰のあたりをゆったりと撫でていたコウライギの手が帯にかかり、徹はぎこちなく腰を浮かせて彼に従った。
 すっかり衣服を取り去られて頬を赤らめる徹の前で、コウライギもまた身に着けていた龍袍を脱ぎ捨てて床に落とす。たっぷりと刺繍の施されたそれを反射的に目で追うが、頬に大きな手を添えられて視線を戻された。体重をかけすぎないように身体を重ねられると、太股のあたりに熱いものが触れるのがわかる。それに動揺するより早く、コウライギの唇が再び徹のものに触れる。
「ん、……っん」
 唇を擦り合わせるように何度も重ねられ、それからぺろりと舐められる。今度は自然に唇を開くと、そこにぬるりと入ってくるのはコウライギの舌だ。自ら舌を擦り寄せると、顔を動かしながら舌を絡めてしごかれ、腰がびりびりと痺れて熱くなる。素肌に直接触れるコウライギの手は宥めるように徹の脇腹をゆっくりと上下していて、そこから伝わる体温が気持ちいい。
「あ、あっ」
 這い上がってきた手が徹の乳首をきゅっと捻り出す。キスさえコウライギ相手が初めてだった徹にとっては曖昧な感覚だったが、彼の手でそこを摘ままれていると考えるだけで不思議なほど身体が熱くなった。唇を離して薄く微笑んだコウライギが、見せつけるように緩やかに身体を下げて乳首に近づけていく。それをドキドキしながら見守る徹の前で、彼の舌が伸ばされてそこを舐めた。
「ふあ、あ、あ」
 目を合わせたままちろちろと弾くように舐められて腰が跳ねる。彼の舌は唾液で濡らされた乳首からすぐに離れ、次はもう一方に吸い付いた。濡らされた乳首を指先で捏ねられながらもう一方を強めに吸い上げられると、曖昧だった感覚がどんどん鋭敏になっていく。じゅっと音を立てて吸われ、徹は身体を丸めて震えた。
「んあっ! あぁっ!」
 その間も、コウライギは股間のものをぐいぐいと徹の太股に押し付けてくる。熱いものが少し濡れてぬるりと太股を滑るのがたまらなく淫靡で、身体が微かに揺れるのを止められない。膝を割られ、太股の内側から少しずつ付け根に向かって擦りながら上がってくる彼のものが熱くて、愛撫を施されながらも意識がそこから離れない。
「は、あ、コウライギ、あ」
 尻の間に密やかに入ってきたそれが、性交を思わせる動きでゆっくりと前後する。きゅうっと股間に切ない感覚が走って、徹は自分のものが勃起していることに気づいた。ほとんど同時に乳首を甘噛みされ、思わず両腕でコウライギの頭を抱き締める。押し付ける形になった乳首を舐め回され、とうとうはっきりとした快感に変わった感覚に涙が滲む。
「だめです、あっ、コウライギ、だめ」
 強すぎる感覚に悶えていると、ようやくそこから唇を離してくれたコウライギが目許にくちづけてくれた。滲んだ涙を吸い取られ、途方に暮れた子どものように彼を見上げてしまう。
 そんな徹を優しい眼差しで見下ろしていたコウライギが、徹を身体の上に載せる形で反転して寝台に横たわった。
「んあっ」
 ちょうど二人の身体の間にそれぞれのものが押し付けられ、強い刺激にぶるりと震えた。コウライギが蓋のついた小さな壺のようなものを持っているのが視界の端に映る。油脂のようなそれは白っぽく、彼が捏ねるとぬるりと溶け出した。それを纏った指先が徹からは見えない背中の方へ消えたかと思うと、尻の間に塗り付けられて飛び上がりそうになる。
「あっ、何、何ですか……」
『大丈夫だ、トール。大丈夫』
 動揺を露わにした顔が引き寄せられ、幾つものくちづけが頬や鼻先に落とされる。その間も指先は徹のそこをぬるぬると撫でていて、腰がびくびくと震えてしまう。その度にお互いの勃起したものが擦り合わされて、徹は甘いため息を漏らした。
「ぁ……」
 ぬめりを纏ったコウライギの指先が、ゆっくりと侵入してきた。違和感はあるが痛みはなくて、その奇妙な感覚がぞわぞわと腰から駆け上がってくる。指が抜き差しされるごとにだんだんそこからはぬちゅぬちゅと粘ついた音が上がり始めた。それに腰が震えるごとに前にも快感が走り、徹は熱い息をつきながらひたすらコウライギを見つめた。
「コウライギ、は、ぁ、コウライギ……」
『そうだ、トール。ほら、少し締めてみろ。吾の指が入っているのがわかるか?』
「んっ、わか、り、ます、あっ、あ……」
 きゅ、とそこに意識して力を籠めてみる。締めたつもりなのにそこはより一層深くまで指を受け入れて、中の襞を捏ねられる感覚がぞわぞわと伝わってくる。指がぎりぎりまで抜き取られると驚くほど気持ち良くて、更に増やされて押し込まれる感覚に上半身を逸らしてしまう。
『その調子だ、トール……お前は覚えがいいな』
 ちゅっちゅっと唇にくちづけられる。またコウライギの舌が欲しくなって、徹は彼の頬に両手を添えて目を閉じ、唇を合わせて舌を送り込んだ。自分が上になってみると口内の唾液が彼の口の中に流れ込んでしまう。それを啜ると更に啜り返されて、ぬるぬると絡む舌ごと吸われる感覚に酔う。コウライギの指が弄っている部分はますます聞くに耐えない音を発していて、激しさを増してぐちゅぐちゅ掻き混ぜられる動きを気持ち良く感じてしまう。高ぶった感覚を持て余し、とうとう徹は自ら腰を揺らして勃起したものをコウライギのものに押し付け始めた。
「んっ、んっ……」
『ふ……』
 コウライギが気持ち良さそうに目を細める。その表情を見ていると、彼が自分の中に入れた時にはどうなるのかが気になって堪らない。ついつい強請るような顔をしてしまっていたのか、コウライギがひどく卑猥に微笑んだ。
『もう良いだろう。ほら、トール……』
「ひうっ」
 ぐちゅっという音と共に指が引き抜かれ、上擦った声が出る。寝台にそっと横たえられ、コウライギが自らのものに油脂のようなものを塗りたくるのを見つめながら、徹は期待と不安に両目を潤ませた。
『トール、お前が好きだ』
 優しく囁きかけられ、両脚を持ち上げられる。散々指で弄られ、熱を持ったようになっているそこにコウライギのものが押し当てられた。
「んぅ……」
 ゆっくりと、亀頭がほんの僅か入っては出ていく。焦らすような動きにますます腰が揺れる。それを抑えるように抱え込まれ、ぬちゅぬちゅと浅いところを擦られると、純粋な快感で腰が重く痺れた。
「コウライギ、はやく、ください……」
 狭いそこを拡げるようにいつまでも先端だけを抜き差しされるのが堪らない。与え続けられるぬるい快楽に徹のものはとろとろと先走りを流している。とうとう我慢できなくなって強請ると、コウライギが徹にくちづけながら腰を押し込んできた。
「ん、んうっ、んんーっ!」
 襞を掻き分けるようにしてそれが侵入してくる。亀頭が入ったのが、ぐぷっという音でわかって羞恥に顔が真っ赤になる。そのまま亀頭だけをぬぷぬぷ抜き差しされ、舌を絡め合ったまま腰を浮かせて押し付けると、それが思いがけない滑らかさでぬるりと入ってきた。
「んふっ、ふ、は、ぁ、あああっ……」
 その感覚に上半身が反る。ぶるぶると震える腰を掴んで更に奥まで入り込まれる。痛みはなかったが、奥を拓かれる奇妙な感覚に中のものを締め付けてしまう。
「ふか、い、コウライギ、深いです……っ、は、ぁあっ」
『トール……トール』
 宥めるように何度もくちづけられる。だが、そんな優しい態度とは違って、コウライギの腰は緩やかに徹の中を擦り上げ続けていた。
「ひうっ、だめ、コウライギ、あっ、ふかい、ふか、ぁっ」
 切ないような感覚が擦られ押し拓かれる度に腰から這い上がってくる。びくっと腰が跳ねる度に中の襞がコウライギのものに絡みつき、それをぐりぐり抉られるとますます締めてしまう。
『可愛いな、トール』
 両脚をコウライギの腰に絡め、ぼろぼろと涙を零して悶える。奥を抉られる感覚に震え、浅いところを突き上げられる快感に嗚咽し、徹は泣きながらコウライギの唇を求めて舌を差し出した。
「ひうぅっ、ん、んう、んっ、んぁ」
『ん……トール……』
 差し出した舌に舌を絡められ、ぐちゅぐちゅ舐め合う淫靡な音が性交の音に混ざって酷い音になる。勃起して揺れる性器をコウライギの大きな掌で包まれてそこに擦り付けてしまう。
『はっ……痛くはないか……』
「はぁっ、ああっ気持ちいいです、コウライギ、ぁ、気持ちいい……」
 熱に浮かされたようになりながらコウライギを見上げる。微笑んでいるのか泣いているのか自分でもわからなくなって、徹はひたすらコウライギのもので擦られる中から込み上げてくる感覚を追って腰を揺らした。
「ね、コウライギは、コウライギ、気持ち、いいですか、んぁあ……」
『当然だ、トール……ん、お前を抱いているのだから』
 その言葉に信じられないほど満足して、今度こそ徹は微笑んだ。突き上げられる動きはますます激しさを増し、勃起したものを揉みくちゃにされて彼のものを咥え込んだ中が痙攣する。
「コウライギ、コウライギ、好きです……っひあぁ! あ! あ!」
 びくんと一際大きく身体が震え、精液が飛び散る。断続的に射精しながら突き上げられて、悲鳴じみた声が上がった。
「んあっ、あっ、だめ! もう、コウライギ、ひぃっ、いった、いったからぁ……っ!」
 絶頂に達したのにまだ中を抉られ続ける動きが止まってくれない。強すぎる感覚に絶頂が引かず、徹は泣きながらコウライギに縋った。
『っトール!』
 ぐっと深く押し込まれ、中が痙攣する。一番奥で精液を放たれて、その感触に襞がきゅうっとコウライギのものを絞るように締め上げたのを感じる。ぶるぶると全身を震わせて悶える徹の中に何度も押し込むように射精して、コウライギがようやく深い息をついた。
「ぁ……あ……」
『ん……』
 ゆっくりと引き抜かれる動きにぞわりとなる。大きなもので擦り続けられたそこが腫れぼったく熱くなっていて、徹は余韻に身体を震わせながら、吐息と共に隣に横たわったコウライギを見つめた。
『大丈夫だったか……?』
「……はい……」
『よく頑張ったな』
 ことが済んでしまうと堪らなく恥ずかしくなるのは何故だろう。真っ赤になって俯いた徹を抱き寄せ、コウライギは彼が落ち着くまでキスをしながら背中を撫でてくれた。



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