3「いってえ……何しやがる」 ベッドの脇で立ち上がった白金が貴也を睨んだ。落ちた時にでも打ったのか、背中を摩っている。その白衣、脇腹のあたりに真新しい靴跡があるのを見つけて俺はものすごく興奮した。既に勃起してるのもあってかなりやばい状態になる。服に抑えつけられて痛いくらいだ。 ずるい。俺も貴也に蹴られたい。軽く蹴られて嬲られるのもいいし、思い切り蹴られて息もできずに蹲るのでもいい。痛いのは大嫌いだけど貴也になら蹴られたい。ていうかその白衣売ってくれないかな。 「それはこっちの台詞だ。警察の世話になりたいのか」 「ちっ、ガキの癖に」 「そのガキに手出そうとしたのは誰だよ、変質者」 貴也と白金の間の空気がぴりぴりしている。そっか。貴也は淫行全般が許せないタイプなのか。 「くそっ、邪魔しやがって……」 しばらく貴也と睨み合っていた白金が背中を向けた。反対側のカーテンを引いて出ていき、回転椅子にどっかと座る。とりあえず俺とやる気はなくなったようで、少し安心する。でもそれってつまり貴也の個人情報も手に入らない訳で、喜んでいいのか落ち込んでいいのかわからない。 ふと視界の隅に見慣れた携帯電話を見つけて、俺はそれを手に取った。あれ。発信履歴がある。一度もかけたことがない、貴也の番号への。 あれ。もしかして、俺ってからかわれただけなのか。でなきゃ白金が自分から貴也に通報まがいのことをする理由なんてない。 「ほら、そいつ連れてどこへでも行け」 「言われなくともそうする」 貴也はまだ苦々しい表情で白金を睨みつけていたが、すぐこちらに向き直ると思い切り俺の手首を掴んできた。 え。 しっかりとした感触。直接触れ合った肌に、俺のよりもずっと熱い体温が伝わる。 た、貴也が、貴也の手が、俺に、さわっ……た。 「あ、あ、あふ……っ」 目の前がちかちかする。腰が震えて背中が思い切り反る。視界がぐるっと変わって天井の照明が滲む。びくっと身体が跳ねて、俺は呆然と荒い息を吐きながら、射精してしまったことに気付いた。 「……聖司」 初めて聞く、地を這うような貴也の声。ふらふらと視線を向けると、貴也が凍えるような眼差しを俺に向けてきていて、それにまたぶるりと身体が震えた。どうしよう。頭がくらくらする。こんなこと、体験したことなんてない。 「たか、や……ごめん、いっちゃった……」 わななく唇でそれだけ言うと、俺の手首を握る力がますます強くなった。怒りの表情を見せられて腰を快感がぞくぞくと駆け上がる。そのまま力強く引っ張られ、俺はほとんど転がり落ちるようにしてベッドから降りた。足にうまく力が入らなくてふらつく。 「は、貴也、待って」 保健室から引きずり出され、廊下をずんずん進んで行く貴也に辛うじてついて行く。誰もいない突き当たりまできて、貴也が無造作に近くの教室の扉を開いた。誰もいない教室の、教壇のあたりまで来てようやく手が離される。 貴也に触れられるのは幸せで堪らないのに、自分でもびっくりするくらい興奮してしまうから困る。掴まれて少し赤くなった手首を見ていたら急に舐めたくなって舌をつけたら頭を叩かれた。 「何してやがる」 「貴也の手が触ったとこだから」 「説明になってねえ……」 目を片手で覆って天井を見上げる貴也の喉のラインがエロくて思わず喉を鳴らすと、今度はものすごく可哀相なものを見る目をされた。どうしよう、どんな貴也でも好きで好きで死にそう。 「お前が変態なのは知ってるが、だからって自分の手首舐めんなよ」 「だって貴也の手舐めたいし、間接的に舐められるし」 「……俺の手を舐めたいのか」 「うん!」 勢い良く返答してから、はっと気づく。貴也に不快な思いをさせてしまった。俺がそんなこと言われたら殴って地面に這い蹲らせて地面でも舐めてろって言う。もしくはやっぱり殴ってから俺の視界から消えろって言う。きっと貴也も似たようなことを考えたに違いない。よし消えよう。 「ごめん俺消えるね……」 「舐めるんじゃないのか」 はい? |
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